Dr. Saburo Horikawa
Department of Sociology,
Hosei University (Tokyo, Japan)
[概要]都市ガヴァナンスに関する実査報告書の第8冊目で,「ポスト北海製罐第三倉庫保存問題」期をテーマに,学部生5人が小樽の新たなステージの課題を描こうと挑んだ論文集。それは,結局のところ,「『運河論争』抜きに小樽を語れるのか」と問うているように思われる。
(装幀・表紙デザイン・写真=堀川三郎)
[概要]環境社会学会創設30周年記念事業として,学会員150名超が3年の歳月をかけ,満を持して刊行した事典。日本の環境社会学の成果と到達点,今後の課題を明快に示す。本事典で示された環境社会学の今日の見取り図は,初学者のみならず,研究者にも有益である。堀川は編集委員のひとりとして全体の編集,第10章+第11章+付録の編集・執筆を行い,さらに表紙カバーのデザインも担当している。
(表紙デザイン=堀川三郎+精文堂印刷)
> 丸善出版
[概要]日本の環境社会学がオリジナルに開発した概念「受益圏・受苦圏」をコンパクトに解説した一篇。舩橋晴俊や長谷川公一らの理論的・実証的貢献を描くだけでなく,この概念によってみえてくるものと,その今日的意義を明快に指摘する。2017年に刊行された初版が好評のため,補訂増補を施した上で刊行された改訂版。
> 有斐閣
[概要]38年間にわたる北海道小樽市でのフィールドワークの経験をもとに,フィールドでの「失敗」の経験とその乗り越え方について論じた小品。被調査者とコミュニケーションを図ることで収奪的調査から脱しようとしたものの,それも幾多の「失敗」で躓いてしまう。やがて「応答」というキーワードを頼りに,再度,フィールドに還っていく途行きを自己省察する論考。
> 社会調査協会
[概要]江蘇州社会科学院が編集・発行する総合学術誌で,中国におけるコア・ジャーナルである『学海』に掲載された査読付論文。『学海』投稿用に書き下ろした原著論文「受益圏・受苦圏論の理論構制とその現代的意義」を,夏多曼・朱安新の両氏が中国語に訳したもの。故舩橋晴俊氏の理論体系の一部として受益圏・受苦圏論を読み解くとともに,その困難について論じた。
> 論文要旨(中文)
[概要]歴史的景観などを保存しようとする運動を語る際,常に問題となるのは「なぜ,保存するのか」である。先行研究は「それは地域社会の集合的記憶を守るため」と答えてきたが,それは本当だろうか—この疑問をスタート地点にして,集合的記憶という概念が何を上手に説明し,何を説明出来ずにいるのか,試論的に論じたもの。2020年秋の日仏社会学会シンポジウムの成果のひとつである。
> 日仏社会学会年報
[概要]憲法改定と市民運動に関するハーバード大学ライシャワー研究所と慶應義塾大学法学部との共同研究の成果論文集で,堀川はライシャワー研究所連携研究員として参加・執筆した。なぜ,最も先鋭的な運動が最も保守的な「保存」という用語を使用していたのか,なぜSEALDsの学生たちは「さっきも渋谷の109で,この夏用の水着を買ってきました」と前置きをしてから安保法案に反対していたのか,という2つの問いを軸にした論稿。小樽の保存運動参加者と国会前のSEALDs学生らの言説スタイルを検討するなかから,今世紀の日本の社会運動がいまだに1960年代終盤の学生運動という「不在の存在」に深く規定されていることを論じた。さらに「戦後民主主義」の理念を信じて生きてきた国民が「裏切られた」という感覚が広く共有され,「民主主義の原則に則って政治をやれ!」という怒りがあるのではないかと論じている。小樽研究からのスピンオフ論文とでもいうべき小篇。
> 慶應-ライシャワー共同研究プロジェクト
> Lexington Books
[概要]2018年2月に刊行された『町並み保存運動の論理と帰結』(東京大学出版会)を,まる3年かけて英訳し刊行したもの。直訳調を排し,英語ネイティブにとって自然に読める英文にするために徹底的にこだわった。日本に詳しくない読者のために新たな序章を付し,脚注も書き換え・補筆・新設を施した。日本における歴史的景観保存運動のさきがけとなった小樽運河保存運動についてだけでなく,日本の社会学の分析論理の特徴をも世界に伝えようとする著者渾身の一書。紙の本だけでなく,電子書籍版も用意されている。
> Springer Link
> アメリカ都市計画学会誌の書評
[概要]小樽は本当に観光開発の優等生なのかという問いを軸に,観光開発が地域コミュニティに与える影響を考察した小論。北海道小樽市で1997年から実施してきている景観定点調査のデータをもとに,現在の小樽では「議論なき路線変更」が進行していることを論じた。なお,この拙稿に関して,同誌編集長のコメントが「編集後記」に掲載されているのにも注目されたい。
> 岩波書店『世界』
[概要]都市ガヴァナンスに関する実査報告書の第7冊目,「観光開発の質と持続性」という喫緊のテーマに学部生が挑んだ論文集。定点観測調査のデータをもとに,小樽のまちづくりを問い直す。
(装幀・表紙デザイン・写真=堀川三郎)
[概要]同じ第25号に掲載された牧野厚史「歴史的環境保存の社会学の展開方向:堀川三郎著『町並み保存運動の論理と帰結—小樽運河問題の社会学的分析』を読む」(pp.202-210)への応答として書かれた,著者リプライ。「歴史的環境保存の社会学」研究の対象が狭すぎないかどうか,が論争のポイントとなっている。
> 『環境社会学研究』
[概要]初学者向けの社会学テキストの中の一章で,きわめて短い紙幅で原発問題を論じた小論。東京は大量に電気を使うのだから,東京で発電すれば送電線網を節約できるはずなのに,なぜそうはなっていないのか——素朴な疑問から原発立地のポリティクスを読み解こうとした論稿である。側註には用語解説,人名解説,読書ガイドもあって初学者に優しいテキストだ。
> みらい
[概要]長年,文化遺産とその保存の問題を研究してこられた小川伸彦氏(奈良女子大学)による拙著『町並み保存運動の論理と帰結』の書評への応答。拙著の唱道する「歴史的環境保存の社会学」が,「変化の社会学」と言えるのかどうかがひとつの論点となっている。
> 『三田社会学』
[概要]先頃,すいれん舎から刊行した『原発災害・避難年表』は,どのような方法論に基づいて編集・刊行されたのか,年表という形式だからこそ見えてくるものとは何か,そして福島原発災害を理解する上で年表はいかに貢献できるのか——こうした諸論点に考察を加えた論稿。『原発災害・避難年表』をひも解く際のメタテキストともいえる一篇である。従来,着目されてこなかった若者—子どもというには大き過ぎ,大人と呼ぶには若過ぎる—にフォーカスし,彼/彼女らが辿った避難の経路を図示した「個人避難年表」中のダイアグラムは,オリジナルな貢献であると思われる。
> 『環境と公害』(公害編集員会・岩波書店)
[概要]日本における環境社会学の成立と展開,現状を概説した論稿。環境社会学の現状をコンパクトに概観できるだけでなく,基礎文献を掲げ,初学者への導入としても最適である。共著者の青柳みどり氏は,国立環境研究所社会システム領域首席研究員。
> 丸善出版
[概要]7年を経て,なお多くの人々が故郷を奪われたまま,避難を続けている福島原発震災。その実態を,「若者」と「避難」に焦点をあてて記録する年表。抽象化された避難ではなく,顔も名前もある具体的な人の避難経路を本人たちの言葉と図表で描き出す「個人避難年表」が注目される。
> すいれん舎
[概要]日本における歴史的景観保存運動のさきがけとなった小樽運河。当事者たちの語りを丹念に追いつつ,開発がある種の必然でもあった都市の社会史,住民たちの語りが共同性を得てゆくプロセス,今日に至る観光都市化のアンビバレンツをも複層的に見つめ,町並み保存の「意味」を問う。著者による33年間のフィールドワークが結実した,圧倒的なモノグラフ[東京大学出版会の内容紹介から引用]。
(装幀・表紙デザイン・写真=堀川三郎)
> 東京大学出版会
> 西村幸夫氏の書評
> 小川伸彦氏の書評
[概要]日本の環境社会学がオリジナルに開発した概念「受益圏・受苦圏」をコンパクトに解説した一篇。舩橋晴俊や長谷川公一らの理論的・実証的貢献を描くだけでなく,この概念によってみえてくるものと,その今日的意義を明快に指摘する。
> 有斐閣
[概要]景観の保護問題について,その具体例と環境社会学における分析方法,位置づけについて平易に論じた論稿。保全と保存の違い,1960年代以降の日本の町並み保存運動の意味と意義についても論じている。堀川はこの論稿の他,日本の「環境社会学会」の成立史についても寄稿している。初版4刷を受け,現在は第2版で5刷のロングセラーである。
> ミネルヴァ書房
[概要]不知火海水俣病に関する膨大な文献を網羅した図書目録。基本書誌データと書影を掲げるだけでなく,それぞれの内容を180字程度で紹介する読書ガイドでもある。水俣病について学ぼうとする初学者に特に有用。堀川は,生涯を水俣病の研究と患者サポートに捧げた医師・故原田正純氏の著作群の解説を執筆した。
> 水俣フォーラム
[概要]国際社会学会・第3回社会学フォーラム(於ウィーン大学)で報告した英文口頭報告論文を,大幅に改訂増補した論文で,環境社会学説史研究の一篇。1978年,アメリカで刊行された一連の論文によって環境社会学の誕生が告げられてから39年,公害研究の分厚い蓄積のあった日本で,環境社会学はいかに受容され,何を得て,何を失ったのだろうか。P.セルズニック独自の概念である「制度化」を補助線にして,日本の環境社会学の特質と問題点を描こうとする試論。
> 慶應義塾大学『法学研究』
[概要]都市ガヴァナンスに関する実査報告書の第6冊目。「保存と経済」という壮大なテーマに学部生が挑んだ渾身の論文集。観光客入り込み数という量的な回復を経てなお,街場で不満や危機が声高に語られるのはなぜか。観光ブームに沸いているのに,コンスタントに歴史的建造物が取り壊され,更地が拡がっていくのはなぜか——こうした一連の問いをもとに,小樽のまちづくりを,住民の「思い」からではなく,「都市のサステイナビリティの成立条件」という地平で問う。
(装幀・表紙デザイン・写真=堀川三郎)
[概要]都市ガヴァナンスに関する実査報告書の第5冊目。「運河保存」から「リハビリテーション型まちづくり」「観光開発」へと展開してきた小樽は,今,中心市街地の再定義を迫られている。観光入り込み数の減少のみならず,定住人口の減少と超高齢化の進行。こうした事態を前に,地元の観光商店街の店主たちが,観光の質の向上を求めて商店街振興組合を設立した。シャッター通り化が進行する商店街凋落の時代にあって,彼らの行動は遅すぎはしなかったか。彼らに勝算はあるのか——小樽のアクチュアルな問題に真正面から挑む論文集。
(装幀・表紙デザイン・写真=堀川三郎)
[概要]日本の公害研究・環境社会学という知的伝統のなかで培われてきた「年表」という手法は,はたして開発社会学に何をもたらすのか。『環境総合年表』,A General World Environmental Chronologyという2冊の環境問題についての年表を編纂した著者の経験に基づいた年表方法論。
> 明石書店
[概要]都市空間の変化は,どのような過程を経てコントロールされているのか。それは日本とアメリカでどのように異なるのか。これが本研究を主導する問いである。したがって本研究は,建物が常に更新され,新たな開発が起こり,人びとの移動が起こる都市は,一体,いかなる形で社会的にコントロールされてきたのか,その制御過程を探究する社会学的研究であるということができる。
具体的には,景観をめぐる2つの保存運動の事例研究をもとに行われる。日本国内の事例としては北海道小樽市の「小樽運河保存運動」を,アメリカの事例はミズーリ州セントルイス市の「旧郵便局舎・センチュリービル保存運動」を取り上げて分析した。後者のセントルイスの事例は,アメリカ保存法制史上に特筆すべき法律二つを産み出したにもかかわらず,今日まで研究されてきていないものである。
セントルイスの「旧郵便局舎」(Old Post Office)と隣の「センチュリービル」(Century Building)は,その保存をめぐり,二度にわたって全米の注目するところとなった。一度目は「旧郵便局舎」の保存で,地元の保存運動の努力によって全面保存を勝ち取った。二度目は隣の「センチュリービル」をめぐるものであったが,アメリカ保存運動の総本山ともいえる「ナショナル・トラスト」(National Trust for Historic Preservation)が開発業者の側に立ち,地元の保存運動は大敗する。なぜ,「トラスト」は「センチュリー・ビル」の取り壊しを容認したのだろうか。なぜ,保存運動同士が闘わなければならなかったのか。アーカイヴスの解読と運動当事者へのヒアリングから,この事例の全体像を明らかにし,なおかつ小樽と対比して論じた。小樽についての資料は1984〜2014年の,セントルイスの資料は2007〜2015年の,それぞれフィールドワークに基づいている。
[概要]2014年7月に横浜で開催された「世界社会学会議横浜大会」(The 18th World Congress of Sociology 2014, International Sociological Accosiation [ISA])および連動プレ企画の国際シンポ「サステイナビリティと環境社会学」についての報告。東アジアから「環境年表」という方法論が提起されたが,それをめぐる2つの会議のセッションでの議論の内容について紹介している。
> 『社会と調査』
[概要]国際社会学会の第18回世界社会学会議(於横浜)にあわせて開催された「サステイナビリティと環境社会学」コンファレンスの予稿集(A4判,308pp.)。福島原発事故に関するテーマセッション(1)と,刊行されたばかりのA General World Environmental Chronology (Tokyo: Suirensha, 2014) の成果とその方法論を検討するテーマセッション(2)での報告論文を収録している。年表という方法に関する方法論的・比較社会論的考察がなされた堀川の論文も収録されている。
(装幀・カヴァーデザイン=堀川三郎)
[概要]国際社会学会の第18回世界社会学会議(於横浜)にあわせて刊行された,法政大学社会学部教員の外国語論文集(A4判,322pp.)。16本の論文(原著および再刊)は,英語,ドイツ語,ポルトガル語で書かれており,世界社会学会議では持ち込んだ400冊がほとんど無くなるほどの反響があった。堀川のポルトガル語による水俣病の概説論文(1999年)も再録されている。
(装幀・カヴァーデザイン=堀川三郎)
> Full text (in Portuguese)
[概要]世界初の英語による総合環境年表。125ヶ国,世界人口の約94%をカバーする,文字通りの公害・環境問題とその研究史についての総合年表である。1977年に刊行された記念碑的労作『公害・労災・職業病年表』(飯島伸子編著,公害対策技術同友会;索引付新版,2007年)の方法論を継承しつつ,統合年表,トピック別年表などの新機軸を盛り込んだもの。2010年に刊行された『環境総合年表』(すいれん舎)の大幅な増補改訂版を英訳したものと言ってよかろう。年表という一覧性のある形式は,あるひとつの公害事件を,世界史的観点から正確に位置づけることを可能とする。15ヶ国からなる150人の研究者の4年間の共同作業の結晶は,初学者にも専門研究者にも不可欠の研究ツールであると思われる。堀川は編集委員の一人として企画・編集・校閲を担当すると同時に,版面の基本設計にも携わった。膨大な情報を詰め込んだ本年表ではあるが,タイプセットの第一人者・高田氏の精緻な組版技術に支えられて,極めて読みやすい版面となっていると自負している。
> 旧サステナビリティ研究所刊行物一覧
[概要]ある都市神話——小樽の堺町に出店している観光業者は,ほとんどが市外の業者だ——を,実証的に検証する論稿。土地所有関係と業者の市内/市外を現地調査すると,土地は8割が市内の者が所有しており,業者の5割強が市内在住であった。市内の者が多数を占めるにも関わらず,なぜ小樽市民は「ほとんどが市外の業者だ」「税金も払わずに小樽で荒稼ぎしている」と思っているのか。社会学的な意識調査と,土地所有といったハードデータとを繋ごうとする実験的な論文である。
[概要]都市ガヴァナンスに関する実査報告書の第4冊目。定点観測データの詳細な解析から,小樽の観光開発の「終わりの始まり」がすでに始まっており,過疎化が進行し始めているとする分析。それを踏まえ,市中の商店街組合の動きを分析した論稿を掲載。過疎都市の時代に,運河を核にしたまちづくりの遺産をいかに継承していくのか——小樽の今日的課題に向き合った論集である。
(装幀・表紙デザイン・写真=堀川三郎)
[概要]2011年3月11日に日本を襲った大震災,すなわち「3.11」は,複合苛酷災害である。だからこそ,「3.11」をめぐって無数の問いが提起されてきたが,それらは集約的に「3.11までの体制でよかったのか」と表現しうる。今,問われているのは,ある原発再稼働の是非だけではなく,「『3.11体制』を再稼働すること」の是非である。では,環境社会学はこの問いにどう答えるのか。本稿では,解答のための一戦略として,「3.11までの体制でよかったのか」という問いを,「環境社会学にとって『被害』とは何か」と再定義して考察する。なぜなら,被害把握こそがもっとも急がれるべき課題であるからだ。被害を矮小化しようとしたり,そもそも被害などないのだとする動きが出てきているなか,あらためてわれわれ環境社会学者が積み重ねてきた被害の実態を語る方法とその成果を示すことが必要である。他の学問分野が語る「被害」が,われわれのフィールドでの感触と大きく異なると感じられる今だからなおのこと,環境社会学にとっての被害を語ることは,学問的にも社会的にも大きな意味をもつ。いまだ明らかにされていない被害を明らかにし,語られていない被害を語るためにも,あらためて被害について再考することが求められている。この作業は,他の社会諸科学との協働をも可能にしてくれるにちがいない。本稿は,そうした協働に向けた粗描の試みのひとつである。
> 『環境社会学研究』
[概要]法政大学社会学部による科研費プロシェクト「公共圏の創成と規範理論の探究——現代的社会問題の実践的研究を通して」の一翼を担ってきた環境問題・環境政策研究班のメンバーが,2007年度から4年間にわたって蓄積してきた研究成果。収められた12篇の論文は,公共圏における熟議はいかに成立するのか,熟議を経た後にいかなる環境政策が実現可能なのか,環境問題の解決のために社会運動はいかなる貢献可能性を持つのか,といった諸点を検討している。規範理論を扱った序章と第1部に続き,第2〜3部では具体的な環境問題について論じているが,通常の時期区分をとらず,環境保護という価値がいかに政策に組み込まれ,規範的に作動しているかを軸に編まれている。単なる歴史的時期区分ではなく,規範の「深度」において区分しようという特徴をもった論集である。表紙の写真は,リハビリ中の沖縄のサンゴ(写真=池田寛二氏)。堀川は編者のひとりとして全体を統括・編集し,序章「規範の深度——環境と公共圏を論じるために」(池田寛二氏と共著)も執筆した。
> 法政大学出版局
[概要]都市ガヴァナンスに関する実査報告書の第3冊目。定点観測データの詳細な解析から,小樽の観光開発の「終わりの始まり」が始まっているのではないか,と分析している。運河論争以降,曲がりなりにも自らの町の歴史性を「売り」にしてきたデザイン原理が静かに(だが確実に)変化しつつあるのではないか——定点観測の切れ味を示す論集である。
(装幀・表紙デザイン・写真=堀川三郎)
[概要]近世都市の建築や有機的秩序を持った空間構成は,開発の嵐が吹き荒れる高度成長期に,その開発指向を相対化するために,いわば「発見」されたということができる。では,近代以降に発展した都市−−−例えば,北海道の諸都市−−−の場合は,どうだったのだろうか。近世都市としての厚みをもたない近代都市において,「水の路」はいかに生成され,展開してきたのだろうか。他の近世都市に認められるような精巧な工夫や仕組みに相当するものは創られたのだろうか。本稿は,この問いに,北海道小樽市という近代都市の事例をもとに考察する試みである。現代を相対化するための発見だけではなく,近代都市がいかに水と向き合おうとしてきたのか,欠落と連続,移植と生成について考察した。それはまた,歴史の浅い近代都市が僅かながらも創り出した水辺の在りようが,どのように住民によって生きられ,護られてきたのか−−水辺空間の公共性−−をとらえ直す営みでもあった。2011年5月の関東都市学会シンポジウムでの招待講演をもとに執筆された論稿である。
> 『関東都市学会年報』
[概要]日本と世界をカヴァーした,初の環境総合年表。故飯島伸子先生の『公害・労災・職業病年表』の思想と手法を受け継ぎながら,「重要事項統合年表」「国内トピック別年表」「世界各国年表」の3種類の年表を収録した。例えば「原子力一般」(pp.310-314)を見てみるなら,日本のみならず世界の原子力開発がどのように展開してきたかを「読む」ことが可能だし,「柏崎刈羽原発」(p.316)や「青森県核燃料サイクル施設問題」(pp.319-320),「JCO臨界事故」(p.326)などの個別トピックの詳細な展開過程が概観できる。すべての項目に出典・典拠を明記しているため,読者が原典資料にあたって確認することが可能である。巻末には,詳細な出典一覧,地名索引,人名索引,事項索引を付した。堀川は編集メンバーの1人として,全体の編集方針の決定やトピック別年表の執筆のみならず,版面設計にも携わった。
> 版元ドットコム
[概要]近代が前提としてきた均質な時空は大きく揺らぎ,再審の時を迎えている.かつてル・コルビュジエが『輝ける都市』で描いたような,均質で透明な「空間」に人々が住まう都市は,すでにその輝きを失っている.自らの思い出や意味に彩られた「場所」をもって「空間」化に抗う人々の運動が各地で頻発していることが,その証左である.だが,「場所」は両義的だ.それは抵抗の根拠となりうる一方で,棘を抜かれ空間化を正当化する物語として消費されてしまうこともあるからだ.今問うべきは,誰が,どのように抵抗しているかであろう.したがって本稿は,筆者が1984年から継続的に調査してきた小樽運河保存問題を事例に,いかなる人々が変化に抵抗しているのか,いかに変化を正当化する物語に抵抗しているのかを分析する.具体的には,行政と保存運動の主張がなぜすれ違っていったのか,いくつかのレイヤーに分節化して明らかにした.さらに保存運動内部に異なる指向をもった4つのグループが存在しており,そのダイナミズムが運動自体の盛衰を左右していたこと,そこには棘を棘として生きようとする人々がいたことが解明される.結論として読者は,「保存」という名称とは裏腹に,保存運動が実は「変化」を社会的にコントロールしようとする実践であったこと,そして社会学が「歴史的環境」という変数を組み込まなければ,こうした保存運動を分析しえないことを理解するだろう.
> 全文テクスト(PDF)
[概要]日本における景観保護問題の実態を,実証的に明らかにしようと行われた調査研究の報告書。北海道小樽市において生起した「小樽運河保存問題」を事例に,当事者達への詳細なインタビュー調査(質的データ)と,景観の定点観測とを並行して行った。その結果,保存運動は運河を自らのアイデンティティに深く関わる「場所」ととらえていた一方で,埋め立て・道路建設を提唱していた市側は,単なる道路建設のための「空間」と考えていたことが明らかにされた。また,定点観測データからは,小樽の観光資源である歴史的町並みが急速に失われつつある逆説的状況が明らかになった。第4章のみ,研究協力者・森久聡氏の手になる商店街調査報告となっている。
(装幀・表紙デザイン・写真=堀川三郎)
[概要]景観の保護問題について,その具体例と環境社会学における分析方法,位置づけについて平易に論じた論稿。保全と保存の違い,1960年代以降の日本の町並み保存運動の意味と意義についても論じている。堀川はこの論稿の他,日本の「環境社会学会」の成立史についても寄稿している。[現在は第2版]
> ミネルヴァ書房
[概要]都市ガヴァナンスに関する実査報告書の第2冊目。小樽観光協会の幹部が,本書をテキストに新人研修をしたという逸話をもつ論集。定点観測データの経年変化を概観できる巻末資料は,都市史の観点からも重要である。
(装幀・表紙デザイン・写真=堀川三郎)
[概要]都市ガヴァナンスに関する実査報告書。小樽運河保存運動とその後の観光開発び展開を,「ガヴァナンス」をキー・コンセプトに分析した論集。巻末に定点観測データの経年変化を概観できる巻末資料を付した。なお,本報告書は,Japan Since 1945: From Postwar to Post-Bubble (Christopher Gerteis & Tomothy George, eds., 2013. London: Bloomsbury)において言及されている。学生の論文集という枠に収まらない意欲的な論文集と言っても言い過ぎということはなかろう。
(装幀・表紙デザイン=堀川三郎)
[概要]「社会学はなぜ,歴史的環境保存の運動を無視し,分析しないできたのか」という問いに主導された本稿は,英国・米国,そして日本での研究動向を概観したうえで,「歴史的環境保存の社会学」へのスケッチを試みた。在外研究期間を過ごした米国・ハーヴァード大学での研究成果の一部。
> 慶應義塾大学三田哲学会『哲学』
[概要]都市社会におけるリスクとは,何も災害だけではない。生涯賃金の過半をつぎ込んで買った自宅の目の前に,陽を遮る高層マンションが建ってしまうという不可逆的変化も含まれるのではないか。それはなぜ起こり,なぜ,リスクとして認識されないのか。こうした問いから,日本の都市計画の孕む問題点と,川越の町並みを例にして,近代以前の町並みが持っていたリスク回避の智慧について論じている。
> 東信堂
[概要]奥田道大教授(立教大学・中央大学)の退職記念論文集として編まれた論文集。堀川は,フィールドワークの古典とも言われるWilliam F. WhyteのStreet Corner Societyを詳細に検討するなかから,Whyteの方法論を再検討し,研究者とフィールドとの関係性について考察している。
> 明石書店
[概要]アメリカ歴史学界での水俣病研究の第一人者・ティモシー・ジョージ氏(ロードアイランド大学教授〔Prof. Timothy George〕)とともに刊行した,英語で刊行された重要な水俣研究文献の解説付文献ガイド。巻末には,水俣に関するドキュメンタリー・フィルムのリストと解説がある。企画草案は実川悠太氏(水俣フォーラム)が作成したが,ほとんどの執筆・編集作業はジョージ教授と堀川の2名が行った。
[概要]環境文化を護るうえで重要な役割を果たしてきた「ナショナル・トラスト」運動を,社会学的に論じた論稿。イギリスで生れたその歴史的背景を踏まえたうえで,トラスト運動の戦略と思想を概説する。そして,それが日本にいかなる意味と含意をもちうるのか,筆者のフィールドワークの経験から説き起こしていく。景観と所有という,古くて新しいテーマへの筆者なりの解答が示されている。
> 有斐閣
[概要]歴史的環境についての社会学的分析を正面から論じようとする本邦初の論集。最初期から,社会学的に町並み保存問題を扱ってきた堀川の論稿は,歴史的環境保存が観光開発と結びつくと地域社会にはいかなる問題が生起するのかを,長期間にわたる事例研究と定点観測から論じているもの。観光開発の優等生と見なされ全国から注目されているコミュニティも,大きな矛盾に苦闘して様が描かれ,それを通じて社会学がいかに分析と提言を行えるのかについて試論を提起している。
> 新曜社
[概要]33の問いを通じて社会学の可能性を開示しようという試みの一書。堀川は「環境と共生するシステムは可能か」という問いをもとに,なぜ環境社会学という学問領域が必要であり,かつ,成立するのかについて論じたもの。熊本水俣病を事例に,なぜ,理系の学問領域だけでは不十分なのかについて論じ,社会学の貢献可能性を提示した。
> 新書館
[概要]日本の環境社会学はいかに成立し,いかに展開してきたのか。そして,欧米のそれに比して,いかなる特徴を持つのか——本論文は,戦後日本の社会学的環境問題研究の軌跡を,1945-1996年を中心に振り返りつつ,研究上の動向を概観した。基礎資料となる文献データベースが十分に整備されていない現状に鑑み,1945〜1996年までの51年間の研究動向の量的データを呈示した。それをもとに,現在までに獲得されてきた4つの研究パラダイムを抽出し(被害構造論,受益圏・受苦圏論,生活環境主義,社会的ジレンマ論),1997〜1998年のデータを加味して概観した。さらに,こうしたパラダイムとは独立・横断的に行われている方法についても若干の検討を加え,環境社会学の今後の課題を試論的に提起した。
> 『環境社会学研究』
[概要]日水俣病研究の現状と新たな動向を概観した概説論文。ブラジルの学術雑誌『環境と社会』(ブラジル・カンピナス国立大学環境研究センター刊)第2巻第3・4合併号所収の論文。『環境と社会』誌のために書き下ろした英文論文が,編集員会によってポルトガル語に翻訳されて掲載されたもので,著者・堀川にとって初めての海外で刊行された論文となった。
(→2014年7月に刊行されたSocial Sciences at Hoseiに再録されている)
> Full text (in Portuguese)
[概要]なぜ,社会学が景観問題を扱うのか。それは都市計画学や建築学の領域ではないのか。本論文は,こうした疑問に答える形で,環境社会学的な景観保存運動の分析という分野を確立するための野心的試みである。詳細な事例分析のみならず,その分析を通じて,戦後日本の社会学の背後仮説をあぶり出し,「場所性」に着目した社会学的研究の必要性を説得的に示している。なお,本論文はJapan Since 1945: From Postwar to Post-Bubble (Christopher Gerteis & Tomothy George, eds., 2013. London: Bloomsbury)において数度,引用・言及されている。
> 東京大学出版会
[概要]社会調査は現場で行われる技術であると同時に,認識活動でもあるのだと主張する編者・執筆者による挑戦的な社会調査論集である。筆者(堀川)は,伊根と小樽の事例をもとに,現場でフィールドワークをするとは一体,何を調べることなのかを論じている。読者は,フィールドワークの実相とともに,その深さと襞とを理解するだろう。
[概要]環境社会学の問いの形式とその可能性について,熊本水俣病を事例に据えて解説したもの。いわゆる「文科系」学問である社会学に,なぜ,「環境社会学」なるものがあるのか,そしてそれには一体何ができるのか。この素朴だが本質的な問いを,初学者向けに平易に説いた,筆者なりの社会学入門である。
> 弘文堂
[概要]「町並み保存運動」は,単なる懐古趣味に過ぎないのではないか——こうした世間の批判が正しいのかどうかを,徹底したフィールドワークによって検証した論文。保存を訴える保存運動の側と,それに対峙して埋め立て・道路建設計画を死守しようとした市行政側の双方を調査して,当事者たちの「意味世界」を描いている作品だが,これは単に「双方に取材しました」という表層的なことにとどまらない。「運動」と「行政」という異なるまなざしを併置して記述することは,両者の原理的相違や状況認識の差,構築された論理の相違を明確化するためにこそ行われている。
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